インタビュー

VUEVOが高める、自己肯定感とキャリアの可能性

パーソルダイバース株式会社
谷 園子 様(写真左)
2021年パーソルダイバース株式会社入社。人事部健康推進グループに所属し、臨床検査技師の資格を活かし各種業務を担当。2才の時に聴覚障害の診断を受ける。好きな歌手はさだまさしさん。
パーソルダイバース株式会社
インタビュアー 岩川 貴平さん(写真右)
2021年パーソルダイバース株式会社入社。事業戦略部および雇用開発部に所属。dodaチャレンジなどの対外事業の戦略策定に従事。また、リサーチ業務をとおして障害者雇用領域にも精通。2023年に中央大学大学院戦略経営研究科を卒業しMBA取得。日本キャリアデザイン学会所属。先天性の難聴で等級3級。1990年生まれ。

雑談の中に重要な情報が含まれている

本日インタビューさせていただく岩川です。よろしくお願いします。初めに、谷さんの自己紹介とコミュニケーションスタイルを教えてください。

谷園子と申します。2021年にパーソルダイバース株式会社入社し、人事部健康推進グループに所属しています。具体的な業務内容は、健康診断の管理や、社員の勤怠管理、産休や育休に入る社員への各種サポートなどです。

2歳のときに右から話しかけても反応がないので母が病院に連れていき、聴覚障害が発覚しました。聴力は下がったり回復したりするなど安定しているわけではなく、最初に診断されたときは6級でしたが、現在は2級の診断を受けています。 コミュニケーションスタイルについては、幼少時に聞くことと話すことの訓練を受けたので、口元を読み取りながら話をしてきましたが、高校からはFM補聴器(※マイクから発信された電波を補聴器で受けるもの)を使って、先生が変わるごとにマイクを付けて話してもらっていました。現在は人工内耳を使って音声を聞き取って会話しています。相手が手話を使える場合は、手話でコミュニケーションを行っています。

幼少期から聞こえなかったということで、学生時代に困ったことはありましたか?

高校までは先生が黒板に書くことが一般的でしたが、その後医療系の専門学校に進学すると、話しっぱなしの授業があり、しかも教科書通りに進行しないので予習もできず、聞き取りに苦労していました。

医療系なので専門用語がとにかく多かったです。FM補聴器を購入して先生の胸元にマイクを装着してもらっていましたが、それでも情報保障としては不十分な状態でした。40年以上前のことなので、当時はノートテイク(※手書きやPCタイピングでの文字起こしによる補助)なども無く、友達に後でノートを見せてもらったりしていましたが、今思うと情報保障の選択肢が少なかったな、と感じています。

それから、悔しい思いをしたこともあります。臨床検査技師の国家試験を受け終わって友達と話していて、私が「私この問題わからなかったんだよね」というと「え、この間先生が話してたじゃない」と言われて、その設問に関わる重要な内容が雑談に含まれていたことを知りました。

それは悔しいですね... 私も当事者として、気持ちが想像できます。

幸いぎりぎりで試験には合格しましたが、今でも心に残る悔しいエピソードです。雑談ではトピックが頻繁に変わることが多く、聴覚障害者にとってはその文脈の変化についていくことが難しく、重要な情報が話題にあがったときにすぐに理解することができません。

雑談のなかに重要な情報が埋もれていることもあるのだ、と思いました。これは社会人になってからも同じで、たとえば会議の合間やランチタイムなどの雑談では、業務に関する重要な情報が共有・交換されることがあります。しかし、聴覚障害者はその場にいても情報を逃してしまうことがあり、自身のなかでは大きな課題として捉えています。

もし周りの話が聞けたら、積極的にアクションができるのに

社会人になってからもそういった課題を感じられていたのですね。卒業後は、どのようなお仕事をされていたのでしょうか。

卒業後は臨床検査技師として、結婚するまで約7年間働いていました。様々な業務がある中でも、対人が発生せず一度マスターすればれきるルーチン業務がメインとなる分野であれば、障害があっても無理なく仕事ができると思い選択しました。
ただ、例えば検査結果に異常値が出て報告が必要な時に、本来なら医療機関へ自分で電話をかけなければいけませんが、同僚に頼む必要があり、自己解決できなかったことは不完全燃焼を感じていました。誰かを頼らなければいけないことの積み重ねは、負い目に感じていました。

その後は食品の微生物関係など数社でのお仕事を経て、現在はパーソルダイバースの人事部 健康推進グループで働いています。業務内容は、臨床検査技師の資格も活かしていただき、社員の健康診断に関わることや、保健指導の面談設定、労務で勤怠管理の問合せや、産休や育休に入る社員への各種サポートがメインとなっています。

一般的に、聴覚障害者は会議やミーティングにおいて多くの困難を感じることが多いかと思いますが、今は会社や同じグループの方から多くの配慮をいただいているため、そこまで困っていません。具体的には、会議前には資料が事前配布され、会議後には議事録が共有されるほか、会議中も多くの配慮をいただいています。

ただ、普段仕事をしない方と話すときは、VUEVOを起動するのを待っていただいたり、ゆっくり話すようにお願いするときもあります。また、例えば周囲の人が会話している時に、すごく気になりはしつつ、自分の業務に関係することか分からないので、「もし周りの話が聞けたら、積極的にアクションができるのにな」と思うことはありました。

VUEVOがあることで、状況に応じて最適な手段を自身が選べる

そんな中で、VUEVOをどのように活用されているのでしょうか?

VUEVOは、会議やミーティングの場でとても役に立っていますが、私のメインの使いかたは「自席にVUEVOを置きっぱなしにする」ことです。
自分がパソコンに向かってもくもくと仕事をしている間にも、オフィスではいろんな会話が飛び交っていることが視覚的に分かるようになりました。特に、自グループでの同僚同士の会話内容が視覚的に分かるようになったことは大変ありがたいです。

その会話内容をキャッチアップすることで、「自分以外の人がどんな情報に触れているのか」「誰がどんな事柄をどの程度まで知っているのか」などが分かるようになりました。そうすると、私が知らない事柄が何かを知ることができますし、それを誰に聞けばよいのかを知ることもできます。
逆に、私が知っている事柄について他の人があれこれ討議している場面があれば、その会話に割って入って助言することもできます。つまり、何気ない情報の蓄積こそが、業務上のコミュニケーションにおける前提なのだと感じています。

そのようにVUEVOを使うことで、どんな効果を感じられているでしょうか?

たくさんありますが、1つ目は「最適な選択肢を選べること」です。たとえば学生時代のときはFM補聴器しか選択肢がなかったのですが、現在はVUEVOがあることで、状況に応じて最適な手段を自身が選べる状態になっています。また、複数の手段を組み合わせて活用することも可能になるので、会話の文脈を追うだけで精一杯という状態がなくなり、会話の内容そのものを理解する余裕ができました。

2つ目は、「コミュニケーションの円滑化」です。VUEVOを活用することでオフィスにあふれる雑談や同僚の会話から何気ない情報に触れることができ、業務上のコミュニケーション機会がより増えたと感じています。コミュニケーションが円滑になることで、認識相違が起こりにくくなり、結果として自身の業務の質を高めることができています。

3つ目は、「自己肯定感の向上」です。VUEVOを活用することで自分から積極的に情報をキャッチアップし、情報を発信できるようになりました。周りの人に貢献できる場面が多くあることが分かって嬉しいですし、周りの人に情報保障の配慮をお願いする精神的な負い目を感じることも減りました。VUEVOを置きっぱなしにするだけでよいので、双方にとってとても便利です。自己肯定感が向上することで、より積極的に業務に取り組むことができています。

VUEVOは、話者の位置が視覚的にわかる「360°ビュー」が画期的

複数ある選択肢の中で、VUEVO独自の特徴はなんですか?

VUEVOは、話者の位置が視覚的に分かる360°ビューという機能が画期的だと思いました。他の製品では方向特定も話者分離(※複数人が同時に話しているときに、個別に文字起こしをすること)もできないので、誰が喋っているのかが分からず、口元を一生懸命探し回る必要があります。
これでは会話の文脈を追うだけで疲弊してしまい、文脈の内容そのものを理解する余裕はありません。でも、VUEVOは一目で同時にそれが分かりますので、とても実用的で使いやすいです。会議やミーティングはもちろん、「自席に置きっぱなし」という使いかたも、360°ビューがあるVUEVOならではの使いかただと感じています。

最後に、VUEVOへの今後の期待をお願いします

VUEVOを活用することでキャリアの可能性が広がるのではないかと思います。聞こえないことでの情報格差が軽減されることは自己成長にもつながりますし、他の業務や職種に興味を持つきっかけにもなると思います。

そういう意味では、仕事だけでなく様々な場で使えるようになってほしいです。VUEVOの普及により、社会全体での聴覚障害者への理解と配慮が進み、インクルーシブな環境が広がったらいいなと思います。 たとえば公共交通機関で電車が遅延しているとき、ホーム上でも視覚的に情報が分かると嬉しいです。医療機関での呼び出しや、スポーツ観戦なども…。 私はさだまさしさんが好きで、友人とライブに行くとトークの部分は内容が分からないので、何と言っているのか教えてもらいます。それがリアルタイムで一緒に笑えるようになったら嬉しいなと。歌舞伎やミュージカルも好きで、VUEVOの技術でスマートグラスのようなもので楽しめたら良いなぁと思っています。VUEVOの今後に期待しています。

左からピクシーダストテクノロジーズ株式会社(PxDT)川村、パーソルダイバース株式会社谷様、岩川さん、PxDT川田
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